この記事は2026年2月時点の情報です。定点観測シリーズの初回として、今後の比較基準となるベースラインを確立します。
採用率88%。成功率5%。
この2つの数字の間に、2026年初頭の営業AI(Sales AI)の実態がある。
McKinsey、Salesforce、BCG、MIT、Gartner――名だたる調査機関がそれぞれ独立に、同じ構造を報告している。「ほぼ全員が導入した。ほぼ誰もまだ成果を出していない」。
この記事は、その構造を定量データで可視化し、半期ごとに追跡する定点観測の初回。レギュラーの調査記事が「地図」なら、この定点観測は「GPS」にあたる。今回はベースライン(基準値)を確立し、次回以降に「前回からどう変わったか」を追っていく。
この記事でやったこと
- McKinsey、Salesforce、BCG、Highspot、MIT、Gartner、Forrester等のグローバル主要レポート15本超を横断比較
- 日本の営業AI関連調査20件を収集(ハンモック、BOXIL、PwC、NRI、BCG Japan等)
- 「採用率」と「成功率」の10の指標をベースライン化
- 推定60-70件の定量ソースを統合(英語40件超、日本語20件)
10の指標:ベースライン早見表
今後の定点観測で同じ指標を追跡する。各指標には「どの出典の、どの定義の数字か」を固定し、ソースが更新されたときに差分を記録する。
| # | 指標 | 2026年初頭の値 | 出典 | 調査時期 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 組織レベルのAI採用率 | 88% | McKinsey | 2025年 |
| 2 | 営業担当者の日常AI利用率 | 56% | 2025年 | |
| 3 | 成功率(本番稼働で価値創出) | 5-6% | McKinsey / BCG | 2025年 |
| 4 | AI施策の中止率 | 42% | S&P Global | 2025年 |
| 5 | ROI期待通りの割合 | 25% | IBM | 2025年 |
| 6 | AIで収益改善を実感した割合 | 28% | Highspot | 2025年 |
| 7 | セールステック市場規模 | $49.5B → $57.6B | Business Research Insights | 2025-2026年 |
| 8 | 日本の営業AI利用率 | 26.5-32.4% | ハンモック / ユーザベース | 2025年 |
| 9 | 日本のAI効果実感率 | 66.9% | BOXIL(※活用者ベース) | 2025年 |
| 10 | 日本 vs 世界のAI利用格差 | 51% vs 72% | BCG | 2025年 |
「採用率」の読み方 — 88%の中身
「採用」の定義で数字は37%から90%まで変わる
営業AIの採用率として引用される数字は、ソースによって大きく異なる。これは調査の質の問題ではなく、「採用」の定義が異なるためだ。
| 「採用」の定義 | 数値 | 出典 |
|---|---|---|
| 「組織でAIを何らかの形で使っている」 | 81-90% | Salesforce / McKinsey / Highspot |
| 「個人が日常的に使っている」 | 56% | LinkedIn(2025年) |
| 「週1回以上使っている」 | 45-50% | ZoomInfo(n=1,002) |
| 「ワークフローに統合している」 | 37-43% | Pipedrive / HubSpot |
この差は重要だ。「88%が導入済み」と「37%が実際に使っている」では、見えてくる景色がまったく違う。
ベンダー発表の採用率が軒並み80%超なのは、「組織のどこかで誰かが使っている」を採用にカウントしているから。実際に個々の営業担当者が日々のワークフローにAIを組み込んでいるかというと、その数字はおおむね半分以下になる。
HubSpotの経年変化が示す伸び
HubSpotの調査によれば、営業担当者の個人利用率は2023年の24%から2024年には43%に上昇した(HubSpot State of AI in Sales)。約2倍の伸び。ただしこれはまだ「ワークフロー統合」ではなく「何らかの形で使っている」レベルの数字であり、定着とは区別する必要がある。
Salesforceの最新版: 87%と54%
Salesforceの第7版State of Sales(2026年2月発行、2025年8-9月調査、n=4,050)によれば、組織レベルでは87%がAIを何らかの形で利用。さらに54%がAIエージェントを展開しているという。
ただしSalesforceはAIプラットフォームのベンダーでもある。この数字自体は有用だが、「採用=成功」ではないことは、次のセクションで見ていく。
「成功率」の読み方 — 5%の衝撃
複数の独立した調査が同じ構造を報告
成功率の低さは、1つの調査の孤立した主張ではない。少なくとも6つの独立した調査が、異なる指標・異なるサンプルで同じ方向を指している。
| 指標 | 数値 | 出典 | サンプル |
|---|---|---|---|
| AIで実質的価値を出していない企業 | 60% | BCG | n=1,250社超 |
| 「高パフォーマー」(EBIT5%超がAI由来) | 6% | McKinsey | グローバル調査 |
| 期待通りのROIを達成 | 25% | IBM | n=2,000 CEO |
| AIが収益改善に貢献していると回答 | 28% | Highspot | n=463 |
| CEOが「生産性への影響なし」と回答 | ~90% | NBER(2026年2月) | n=~6,000 |
| AI施策を中止した企業(2024年の2.5倍) | 42% | S&P Global | n=1,000社超 |
| 1年以内のAI投資回収を達成 | 6% | Deloitte | n=1,854 |
BCGの「60%が価値なし、5%が本格的に成果」、McKinseyの「6%が高パフォーマー」、IBMの「25%がROI達成」。これらは独立した調査だが、いずれも採用率の高さと成果の低さのギャップという同じ構造を裏付けている。
NBER 2026年2月: 最新の衝撃
2026年2月に公開された全米経済研究所(NBER)の調査は、約6,000人の経営者(米・英・独・豪)を対象に、AIの生産性への影響を分析した。結果は約90%が「生産性にも雇用にも影響なし」。経営者のAI利用時間は週平均1.5時間にとどまる。
この調査はロバート・ソローの「生産性パラドックス」(コンピュータの時代にはコンピュータの影響がどこにも見えない)を直接引用しており、「AI時代のソロー・パラドックス」という言葉が使われ始めている。
95%問題の読み方
MITの調査(2025年8月)で報告された「生成AIパイロットの95%がP&L(損益)への影響を生まなかった」という数字は、最も頻繁に引用される失敗データだ。ただし、この数字には注意が必要。
- 調査の方法: 150件のインタビュー + 350件のサーベイ + 300件の公開事例を分析
- P&Lインパクトの測定期間が短い(6ヶ月以内)。AI投資の回収に2-4年かかる場合(Deloitte調べでは大半がこの範囲)、6ヶ月で効果が出ていなくても必ずしも「失敗」とは言えない
- 間接効果が除外されている。顧客体験の向上や社員の学習効率改善は、短期のP&Lに直接反映されにくい
とはいえ、MITの95%を割り引いても、BCGの60%、McKinseyの94%(高パフォーマー6%の裏返し)、IBMの75%(ROI未達)という数字が残る。「大半がまだ成果を出していない」という構造自体は、どの調査を使っても変わらない。
AI施策の中止率が急増
S&P Globalの2025年調査(n=1,000社超)によると、**AI施策の大半を中止した企業は42%**にのぼり、2024年の17%から2.5倍に急増した。パイロット段階で止まったプロジェクトの割合(PoC不通過率)は平均46%。
Gartnerも2024年7月の時点で「2025年末までに生成AIプロジェクトの30%がPoC後に中止される」と予測していたが、S&P Globalの実績値はこの予測を上回った。
投資は増えているのに成果が出ていないパラドックス
Deloitteの調査(n=1,854、欧州・中東)によれば、85%の企業がAI投資を増やし、91%がさらに増やす計画。しかし1年以内に投資を回収できた企業はわずか6%。通常のIT投資の回収期間は7-12ヶ月だが、AI投資は2-4年を要する。
McKinseyの調査でも、生成AI投資額の中央値は前年比2倍以上に増加しているにもかかわらず、高パフォーマーの割合は6%で頭打ち。金をかければかけるほど成果が出るわけではないことを示唆している。
営業は特に難しい領域
興味深いことに、営業はAI投資が最も集中しているにもかかわらず、最もROIが出にくい領域として複数のソースが指摘している。
- MIT: 生成AI予算の半分以上が営業・マーケティングに投じられているが、最大のROIはバックオフィス業務から生まれている
- Bain: 営業は「AI活用の新たなフロンティア」だが、売り手の1日が細分化されており、データが複数システムに散在し、プロセスが標準化されていない。AI適用の難度が高い
- Highspot: AIを導入しても、営業チームの80%がバーンアウトやストレスを報告。施策が乱立し、96%が「優先順位の変更による疲弊」を訴えている
一方で、営業でAIが効いた場合のインパクトは大きい。Gartnerの調査(n=1,026)では、AIと連携した営業担当者はノルマ達成の可能性が3.7倍高く、LinkedInの2025年調査では日常的にAIを使う営業が目標を超える確率は2倍だった。
問題は「AIが営業に効かない」ことではなく、「効く条件を満たしている組織が少ない」こと。このサイトのレギュラー調査記事(使われない問題、時間泥棒×AI)で扱っている構造と一致する。
日本の現在地
世界との差: 利用率もトレーニングも大きく後れ
BCGの2025年グローバル調査は、日本のAI活用の遅れを数字で示している。
| 指標 | 日本 | 世界平均 | トップ(インド) |
|---|---|---|---|
| 日常的なAI利用率 | 51% | 72% | 92% |
| AIエージェント導入率 | 7% | 13% | — |
| 十分なAIトレーニング受講 | 12% | 36% | — |
| 経営層がAI方針を提示 | 11% | 25% | — |
PwCの5カ国比較(n=2,642)はさらに厳しい結果を報告している。日本の生成AIによる効果創出水準は、米・英の1/4、独・中の半分。活用推進企業は56%(+13pt増)と伸びているが、効果の「質」で差がついている。
日本の営業AI採用率: 26-32%
日本の営業部門に限定した採用率は、グローバル平均をさらに大きく下回る。
| 調査 | 対象 | 営業AI利用率 | サンプル |
|---|---|---|---|
| ハンモック(2025年7月) | 営業部・営業企画従事者 | 26.5% | n=1,000 |
| ユーザベース(2025年6月) | BtoB営業従事者 | 32.4% | n=618 |
| 電通×日経リサーチ(2025年3月) | 500人以上企業、部長クラス以上 | 2.7%(理想的なAI活用) | n=330社 |
注目すべきは電通の数字。「AIを活用して理想的な顧客分析を実現している企業」は330社中わずか9社(2.7%)。「何らかの形で使っている」と「成果を出している」の差は、日本でもグローバルと同じ構造で現れている。
日本のポジティブデータ
一方で、AIを使っている層の満足度は比較的高い。
- BOXIL(n=389、AI活用者ベース): 成果向上を実感 66.9%
- eセールスマネージャー(n=500): AIツールが有用と回答 84.2%
- JUAS(n=981社): 生成AI導入で何らかの効果あり 73.2%
つまり、使っている人は効果を感じているが、使っている人自体がまだ少ない。日本の課題は「AIが効かない」ではなく「AIを使える状態に到達していない」という、普及の段階にある。
日本の最大のボトルネック: トレーニング
NRIの調査(n=517社)によれば、生成AI導入の最大課題は**リテラシー不足(70.3%)**で、しかもこの数値は前年から悪化している。導入は進んでいるのにリテラシーが追いついていない。
BCGの数字がこれを裏付ける。十分なAIトレーニングを受けた日本の従業員は12%。世界平均36%の3分の1しかない。この「トレーニング格差」が、日本の「利用率は追いついてきたが効果が出ない」構造の根底にある可能性が高い。
2026年の注目ポイント
1. AIエージェント: ハイプのピーク
Gartnerの2025年ハイプサイクルで、営業向けAIエージェントは「過度な期待のピーク期」に位置づけられた。Salesforceは54%がAIエージェントを展開中と報告するが、Gartnerは「数千のAIエージェントベンダーのうち、“本物”は約130社に過ぎない」と警告している。
2025年6月のGartner予測では、2027年末までにAIエージェントプロジェクトの40%超が中止される。「エージェントウォッシング」(チャットボットやRPAをAIエージェントと偽装するマーケティング)が横行しており、60%のAI営業ツールが2024年半ばから2025年Q4の間に閉鎖またはピボットしたとの分析もある(Salesmotion)。
次回の観測で注目する点: AIエージェントの中止率、ハイプサイクル上の位置の変化。
2. バイヤーAIの出現: 売り手だけの問題ではなくなる
Forresterの2026年予測で特に興味深いのが、5社に1社のB2B売り手がAI購買エージェントとの交渉に直面するという予測。購買側もAIを導入し始めたことで、「AI vs AI」の交渉が現実になりつつある。
- 購買担当者の90%超がAIを購買判断に利用または利用予定(Forrester)
- AIを使った購買担当者の19%が「AIの不正確な情報のせいで自信が低下した」(Forrester)
- 準備ができていると感じるB2Bリーダーはわずか20%(BCG)
次回の観測で注目する点: バイヤーAI導入率、AI対AIの交渉事例。
3. 予算引き締め: 「実験」の猶予期間の終了
- Forresterは、企業が計画済みAI投資の25%を2027年に繰り延べると予測
- ゴールドマン・サックスCEO(2026年ダボス会議): 「リターンをもたらさない多額の投資が行われている」
- Gartner: CEOの70%超が生成AIのROIに不満(平均$1.9M投資に対して)
MIT Sloan Management Reviewの2026年1月の分析(Thomas H. Davenportら)は、AIバブルの収縮をドットコムバブルと明確に比較し、「個人レベルの生成AI利用は、漸進的でほぼ測定不能な生産性向上にとどまった」と総括している。
次回の観測で注目する点: AI予算の実際の繰り延べ率、投資対効果のベンチマーク変化。
4. 「疲れ」の顕在化
意外なデータとして、AIを頻繁に使う人ほどバーンアウト率が高いという調査結果が出ている。Fortune誌が2025年6月に報じた調査では、**AI頻用者のバーンアウト率は45%**に対し、未使用者は35%。経営層の76%が「社員はAIに前向き」と思っている一方、現場でそう感じているのは31%にとどまる(HBR)。
KPMGのQ3 2025パルスサーベイ(n=130、売上$10億超企業のC-suite)では、この現象を**「認知疲労」**と呼び、「恐怖の時代」から「疲労の時代」への移行を指摘している。
次回の観測で注目する点: AI疲れの定量データ、従業員のAI満足度推移。
この観測から見えたこと
1. 「採用率」と「成功率」は別の質問に対する答え。
採用率88%と成功率5%は矛盾しているように見えるが、実は異なる質問に答えている。「AIを導入したか?」に対しては「ほぼ全員がYes」。「AIで成果を出したか?」に対しては「ほぼ全員がまだNo」。定点観測では、この2つの数字を常にセットで追跡する必要がある。
2. 日本の課題は「使うか使わないか」から「どう使うか」に移行しつつあるが、トレーニング格差がボトルネック。
日本の組織レベルの導入率は57.7%(NRI)に達し、「導入するかどうか」のフェーズは終わりつつある。しかし十分なトレーニングを受けた従業員は12%にとどまり、効果創出水準は米英の1/4。ツールの問題ではなく、人材育成の問題にシフトしている。
3. 2026年は「選別の年」になる。
Gartnerの「2027年末までにAIエージェントの40%超が中止」予測、S&P Globalの「AI施策中止率が42%に急増」の実績値、Forresterの「AI予算25%繰り延べ」予測を総合すると、2026年は「AIを使う・使わない」ではなく「どのAIを残し、どのAIをやめるか」の選別が本格化する年になる。
4. 営業は「AI投資が最も集中しているが、最もROIが出にくい領域」という位置づけは変わっていない。
MITの「予算の半分が営業・マーケティングに投じられているがROIはバックオフィスから」、Bainの「営業はAIの新フロンティアだがプロセスが標準化されていない」という指摘は、このサイトの他の記事(議事録AI、提案書AI、新人営業)で扱った個別の課題と合致する。
次回の観測予定
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 時期 | 2026年Q3(7-9月目安) |
| トリガー | LinkedIn State of Sales / HubSpot State of AI の更新公開後30日以内 |
| 差分閾値 | 主要指標が10pt以上変動した場合は臨時更新 |
| 特に追跡する指標 | (1) AI施策中止率の推移、(2) AIエージェントのハイプサイクル位置、(3) バイヤーAI導入率、(4) 日本のトレーニング受講率 |
注意点
この記事はグローバルの年次レポートと日本の調査を横断比較した定点観測です。以下の関連記事で、個別のテーマを深掘りしています。
- 営業AI「導入したのに使われない」問題 — 「採用率」と「成功率」のギャップが現場で何を引き起こすかの構造分析
- 営業の「時間泥棒」業務5つ × 生成AIの効き具合 — 業務別にAIが効くところ・効かないところを比較
- 議事録AI、導入前に知っておきたい5つの落とし穴 — 「採用率の高さ」と「満足度の低さ」が顕著な領域
- 提案書AI、修正地獄を避ける使い方 — 「AI予算が最も集中する領域でROIが出にくい」の具体例
- 新人営業の最初の3ヶ月、AIをどう使う/使わない — 脱スキル化データが示す「トレーニング格差」の影響
- 営業AIエージェント、「自動で売れる」の期待と現実 — 採用率・失敗率の背景にあるAIエージェント営業の具体的事例
- 関連記事: 【調べてみた】AI営業メール、送った先で何が起きているか — 採用率と成功率のギャップがAI営業メールの領域で具体的にどう現れているか
- 関連記事: 【調べてみた】初回商談の前日にChatGPTでやる30分の準備 — 採用率4.5%(毎日利用)の現場で「30分だけ使ってみる」具体的なガイド
調査カード
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 調査日 | 2026-02-23 |
| 調査ソース | 年次レポート 15件超 / 調査会社・コンサル分析 10件超 / 業界メディア記事 15件超 / 日本語調査レポート 20件 |
| ソースの言語 | 英語 40件超 / 日本語 20件 |
| 地域・前提 | グローバル調査が中心(McKinsey、BCG、IBM等は多国籍サンプル)。日本データはBCG Japan、PwC Japan、NRI、JUAS、ハンモック等 |
| 情報の鮮度 | 2024年7月〜2026年2月の公開情報が中心 |
ソース偏りチェック
- ✓ 英語・日本語 各10件以上
- ✓ 成功と失敗の両面データあり(採用率・効果実感データ + 中止率・ROI未達データ)
- ✓ 複数の独立した調査機関が同じ方向を指している(三角検証)
- △ 個人ブログ・体験記は今回少ない(定量レポート中心の記事設計のため)
- △ コミュニティ体験談は間接的(ZoomInfoレビュー、Highspot調査の自由回答等で代替)
反対意見・異論
「95%失敗」は過剰に悲観的だという反論には一定の根拠がある。MITの95%はP&L(損益計算書)への直接インパクトを6ヶ月以内で測定した結果であり、間接効果や長期的な学習効果は含まれていない。Deloitteの調査では大半の企業がAI投資の回収に2-4年を見込んでおり、6ヶ月で「失敗」と判定するのは時期尚早という見方もある。
また、Salesforceの「AIと連携した営業担当者のノルマ達成3.7倍」やZoomInfoの「週1以上のAI利用者の80%が高い受注率を報告」のようなポジティブデータも存在する。「うまく使えている少数派」が確実に存在していることは、失敗データと同じくらい重要な事実。
調べきれなかったこと
- Redditの営業コミュニティ(r/sales等)における現場の声は今回未実施。ウェブ検索経由では取得困難なため、Claude in Chromeによる直接検索を次回検討
- LinkedIn State of Salesの2025年版の詳細データ。Deep Sales Studyの一部データは取得したが、フルレポートは入手困難
- 日本企業のAI施策「中止率」に相当するデータ。S&P Globalの42%に対応する日本のデータが見つからなかった
- 中小企業のAI活用実態。大企業中心の調査が多く、従業員100人未満の企業データが不足
私の仮説(暫定)
現時点では、「営業AIの採用率と成功率のギャップは、2026年中に急速に縮まることはない」と考えている。理由は3つ。
第一に、ギャップの原因はツールの性能ではなくプロセスの再設計とトレーニングにあり、これらは時間がかかる。McKinseyが指摘するように、高パフォーマーは「ワークフローを再設計し、リーダーが直接関与し、デジタル予算の20%超をAIに投じている」が、大半の企業はこの段階に達していない。
第二に、営業プロセスは組織ごとにバラバラで標準化が難しく(Bain)、汎用AIツールを適用するだけでは成果が出にくい構造がある。
第三に、日本については、トレーニング受講率12%(世界36%の3分の1)という数字が改善されない限り、導入率が上がっても効果は出にくい。「ツールを入れる」より「人を育てる」の方がはるかに時間がかかる。
ただし、この仮説は「AIエージェントがワークフロー全体を自動化する」シナリオが現実になれば変わりうる。現時点では「ピーク期」に過ぎないが、仮にプロセス再設計を不要にするレベルのAIエージェントが登場すれば、ギャップの縮小は加速する可能性がある。次回の観測ではこの点を特に追跡する。
出典
英語ソース
- McKinsey & Company「The State of AI」(2025年3月 / 11月更新)
- Salesforce「State of Sales, 7th Edition」(2026年2月、n=4,050)
- BCG「The Widening AI Value Gap」(2025年9-10月、n=1,250社超)
- MIT NANDA「The GenAI Divide」(2025年8月、Fortune報道)
- IBM Institute for Business Value「C-Suite Study」(2025年5月、n=2,000 CEO)
- Deloitte「AI ROI: The Paradox of Rising Investment and Elusive Returns」(2025年、n=1,854)
- NBER「CEO Study on AI and Productivity」(2026年2月、n=~6,000、Fortune報道)
- S&P Global Market Intelligence Survey(2025年3月、n=1,000社超、CIO Dive報道)
- Highspot「New Study Finds AI is Failing Sales Teams」(2025年9月、n=463)
- ZoomInfo「State of AI in Sales & Marketing 2025」(n=1,002)
- Gartner「Sales Survey: AI and Quota Attainment」(2024年9月、n=1,026)
- Gartner「Hype Cycle for Sales Transformation 2025」(2025年10月)
- Gartner「Predicts: Agentic AI Projects Canceled by 2027」(2025年6月)
- Gartner「30% of GenAI Projects Abandoned」(2024年7月)
- Forrester「2026 B2B Marketing, Sales, and Product Predictions」(2025年10月)
- Forrester「2026 Technology & Security Predictions」(2025年10月)
- Bain & Company「AI Transforming Productivity: Sales Remains a New Frontier」(2025年)
- LinkedIn / Ipsos「Deep Sales Study」(2024-2025年)
- HubSpot「State of AI in Sales」(2024-2025年)
- HubSpot「State of Sales 2025」
- Pipedrive「State of Sales and Marketing 2025」(2025年7月、n=948)
- MIT Sloan Management Review「Five Trends in AI and Data Science for 2026」(2026年1月、Thomas H. Davenport)
- KPMG Q3 2025 Pulse Survey(n=130 C-suite)
- Salesmotion「AI Sales Tools Buyer’s Guide 2026」
- Meritt「AI Spending and Sales Quota Attainment Crisis」
- Business Research Insights「Sales Tech Market Report」
- Futurum Group「AI Agents Take Center Stage」(2026年、n=830)
- Outreach「Sales 2025 Data Analysis」
- Fortune誌「AI and Employee Fatigue」(2025年6月)
日本語ソース
- ハンモック「生成AIの営業活用に関する実態調査」(2025年7月、n=1,000)
- スマートキャンプ(BOXIL)「営業のAI活用事例アンケート調査」(2025年12月、n=389)
- 電通×日経リサーチ「営業変革課題に関する実態調査」(2025年3月、n=330社)
- eセールスマネージャー「esm sales report 2025」(2025年9月、n=500)
- ユーザベース(Speeda)×マクロミル「営業AI白書2025」(2025年6月、n=618)
- ラクス(配配メールBridge)「営業に生成AIはどう活用できる?」(2025年6月、n=397)
- NRI「IT活用実態調査 2025」(2025年11月、n=517社)
- JUAS「企業IT動向調査2025 生成AI速報」(2025年2月、n=981社)
- PwC Japan「生成AIに関する実態調査 2025春 5カ国比較」(n=2,642)
- 東京商工リサーチ「生成AIに関するアンケート調査」(2025年8月、n=6,645社)
- Ragate「企業における生成AI導入状況レポート」(2025年12月、n=505)
- タナベコンサルティング「デジタル経営に関するアンケート 2025年度」
- BCG Japan「日本の業務上のAI活用率は51%、世界に大幅後れ」(2025年)
- 総務省「令和7年版 情報通信白書」(2025年7月)
- IDC Japan「国内AIシステム市場予測」(2025年5月)
- MM総研「生成AIの個人利用状況調査」(2025年9月、n=20,234)
- ICT総研「法人向け生成AIサービス利用動向調査」(2025年7月)
- NRC「生成AIについて 2025年12月調査」(2026年1月)
この記事は個人の自由研究です。特定のAIツール・サービスの推奨・非推奨を目的としたものではありません。記載のデータは各出典の調査時点のものであり、最新の状況とは異なる場合があります。
記事の調査・構成にAI(Claude)を活用しています。最終的な判断・編集・構成は人間が行っています。